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刊行物・レポート

國學院大學オープンカレッジ

特別講座

平成26年度より実施している國學院大學オープンカレッジは、本年4年目を迎えます。4年前、全互協は儀式継創委員会を発足させ、儀式文化継承のための検討、儀式創新などに取り組み始めました。その具体的な方法の一つとして、また消費者にこうした取り組みを伝える方法として、國學院大學のオープンカレッジに協力して特別講座を開講したものです(互助会保証㈱・㈱冠婚葬祭総合研究所と共催)。

※國學院大學オープンカレッジは、平成29年度より(一社)全日本冠婚葬祭互助協会から(一財)冠婚葬祭文化振興財団に移管されました。
平成29年度より下記(一財)冠婚葬祭文化振興財団をご覧下さい。

新しい儀式文化の創造に向けて -全互協創立40周年シンポジウム-

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2013年6月3日より、当協会は一般社団法人となりました。これを契機に「冠婚葬祭儀式文化の保存・継承」にさらに取り組んでまいります。ついては、全互協と加盟互助会が人生儀礼にどう取り組むべきかを探るべく、豊富な経験と見識をお持ちの方々をゲストにお招きし、記念シンポジウムを開催しました。そのご報告を兼ね、人生儀礼(通過儀礼)の成立の過程などにふれながら行われた、当日の議論の内容を抄録でお届けします。

戦後の「儀式」の変容と現在
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司会: わが国におきましては、戦後30年ほどのあいだに、国民生活は大きな変化を経験しました。冠婚葬祭互助会の名前の由来でもある「冠婚葬祭」といわれる「通過儀礼」「人生儀礼」と呼ばれる儀式も、大きく変わりました。私たちはその現状を認識しつつ、新しい儀式のあり方を提案し、会員の皆様にすぐれたサービスや商品を提供していくことが求められております。
ところで私たちには、平成10年に制定した「私たちは多くのお客様のご満足を通じて、会員システムを発展させ、新しい儀式文化を創造します」という業界理念があります。本日は、この理念を踏まえ、わが業界の発展のために先生方にお話を頂きます。

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石井: 戦後、特に経済成長期になると、大事なのは中身である、形式ではないということで伝統的な儀礼や慣習というものは時代遅れである、というようになおざりにされてきました。しかし、この儀礼や慣習というものの背後には「文化」というものがあります。そうした「文化」をうち捨てていいのか、ということを私たちはよくよく考えなければなりません。
儀礼の効能というものがあります。私たちは、同じことを毎日繰り返していると、どんどんポテンシャルが下がっていきます。ある時に区切り目を儀礼という形でつけて、再生して、エネルギーを充足していく。これが「年中儀礼」というものです。人生においても、子供の時代、青年期、壮年期、老年期という区分が、かつてはあり、それぞれの区分での「人生儀礼」というものがありました。こうした「通過儀礼」といいますのは「人生の構造化」ということでありまして、人生に区切り目を入れて、1年の間、あるいは人生の間に死と再生を繰り返しているのである、と考えております。
日本ではこれら儀礼文化が、戦後どうも壊れてきたようです。しかし戦後も遠く、これだけ生活が変わってしまうと、以前にあった儀礼文化をただもう一度、復活させてやればいいということではないでしょう。現状に適合する我々の1年、我々の人生をもう一度節目をつけながら構造化する儀礼がおそらく求められております。

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波平: 儀礼の多くというものは、1つは宗教的なものと絡んでおります。たとえば日本の場合でしたら、仏教的、あるいは神道的な「宗教儀礼」。もう1つは「世俗儀礼」です。例えば、会社に入るときの入社式あるいは、学校に入る入学式や現在は自治体が行っている成人式などです。どちらも全体としては低調になっていますけれども、ではそれでいいのかと大勢が思っているのかというとそうではないことがはっきりしました。
東日本大震災の後に、私もいろいろな調査をしておりますけれども、被災地の人々が復興に向けて立ち上がるときに、何かの手がかり足がかりにしようとしているもの、それが実は「儀礼」であるというデータがたくさん報告されております。空間も失われ、人の物も失われ、人の絆も失われ、社会組織も失われ、全てのものが失われたとき、とにかく第一歩を踏み出すときに、なにを手がかりにしているか、それは儀礼なのです。大震災は人間が生きていくときに、物さえあればなんとか生存できるというものではないことを、よく私たちに示してくれたと思います。
振り返り見ますと、68年も平和な時代が続いた中で、次第に私たちは人生をどう組み立てていかねばならないかということを、あるいは組み立てることが可能であるかということを忘れかけていたように思います。今後の日本がどのようになっていくのかということでは、決してバラ色ではないことは目に見えていますが、私たちがこれからの生き方を目に見える、誰にもわかりやすい形式を持った「儀礼」というものを通して考えていけることがあるのではないかと考えております。

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藤島: 個人的な経験から申し上げますと、パナマの大使時代にエレイダさんという実業家とお友達になりましたが、大家族でありまして年に1回、40人ほどの一族が集まって色んな話をしているということでありました。ご家族の写真も見せていただいたのですが「あ~、日本にもこういう時代があったんだな~」を思ったことがございました。エレイダさんは当時75歳くらいで、自分のお墓も生前につくっておられ、案内もしてくれたのですが、10年も前から準備をしていたことです。かくいう私自身も、昨今、相応の年になりまして、自分の準備ということも考えるようになりました。調べてみますとエンディング・ノートというのが非常に流行っている。そこにあれこれと書いてみて、自分の人生を見直すということもあるのだ、と思いまして、先般上梓しました著書(『無縁社会を生きる』)にも書かせていただいたというようなこともございます。 先ほど、儀式は文化である、というお話がございましたが、冠婚葬祭も民族により、国により宗教によっていろいろ違いが出ます。スペインやパナマではダンスで結婚式などで一晩中踊り明かす習慣があります。音楽が始まりますと、周りにいる人は体が動き始めるのですね。日本はなかなかこういうものがないと思われます。全体的に日本では、結婚式と披露宴を華やかな中にも整然と行います。葬儀については、ヨーロッパでは火葬が普及してきている。キリスト教も認めているわけですが、宗教と葬式が分離しつつある、ということだろうと思います。 一方で儀礼全般につきましては、日本では非常に多くまた多彩であることに驚いております。海外からクリスマスやバレンタイン、最近はハロウィンなどが入ってきて生活の中になじんでいる。こういった多彩さを、海外の人びとに話しますと驚かれることが多いですね。こうした多彩さもまた、新しい儀式を考える際のヒントになるのではないかと思いますし、一方で消化不良にならないように、いい儀式をつくっていきたいとの気持ちでおります。

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一条: 大学では、孔子の思想を教えています。孔子という人は、人間が社会の中で幸せに生きるにはどうしたらいいかということを追究されました。そこで孔子が打ち出したコンセプトが「礼」というものなのですが、私は「礼」をかたちにしたものが儀式だと思っております。 結婚式やご葬儀をはじめとして、人生儀礼、通過儀礼が色々とあるのですが、これらは時間というものに関わっているようです。時間を愛す、エンジョイするという思想が背景にあるのではないかと思います。「ステイション(駅)」という言葉がありますが、この語源は「シーズン(季節)」と同じだそうです。要するに、一直線のものに区切りを打っていく、変化を与えていく、ということです。 さきほど波平先生から東日本大震災のお話がありましたが、多くの人が痛感したのは普通に葬儀をできることがどれほど幸せであるかということではなかったでしょうか。それ以前には「葬式はいらない」などという人もおられましたが、そういう風潮の社会ではいけないのだということがはっきりしたと思います。「儀式」は心を安定させます。心とは、語源から見ると、ころころ動いて変化しやすいものですが、これに儀式というかたちを与えれば、安定してしっかり再構築していけます。癒やしということにもなります。七五三とか成人式、また新たな儀礼をしっかり再構築していけば、日本人の心も安定してゆくのではないかと思いますし、いじめや虐待、うつや自殺も少しは減っていくのではないかと思っております。 これからの儀式という点では、おじい様、おばあ様を含めた三世代での儀礼の構築はかなり可能性があるのではないかと思いますが、ただこの領域はほとんど先行研究がございませんので、私たちとしては現状把握を進めながら、研究していくことが大事なのではないかと思います。

互助会に望むこと
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石井: 戦後の儀礼文化の変化を現在まで見てみますと、大きな傾向が3つあります。1つは伝統的な儀礼の消滅、または衰退です。2つ目は、残っている儀礼についても、お正月やお盆など、伝統的なものが残っているのですが、かつて伝統的な社会で行われていたものと、かなりの内容が違っております。とくに申し上げたいのは3つ目で、戦後、伝統的な儀礼が駄目になったときに、何が起こったのかというと、新しい儀礼を多くつくってきたのです。あるいは受け入れてきました。
クリスマスをごく普通に行うようになったのは、昭和30年代以降です。さかのぼっていけば明治にケーキがつくられたことなどはありますが、一般に行われるようになるのは、昭和30年代以降です。バレンタインはもう少し遅く、40年代の終わりくらいからです。ハロウィンは20年ほど前には、今のような盛況さは考えられませんでした。最近の年中行事では、節分の恵方巻きがあります。もともと江戸時代に発祥したという説がありますが、21世紀になってから、セブンイレブンを中心に関西から波及して全国区になりました。これも新しい儀礼です。
人生儀礼でいいますと、初宮参りや七五三、これも戦後、盛んになったものです。それから、結婚式も宗教者が関わるようなかたちで大規模になった。つまり、披露宴と結婚式が2段階になったことは、戦後、高度経済成長期のときでありますし、とくにこの20年、30年は厄年が非常に盛んになっております。
読売新聞が冠婚葬祭に関する世論調査をいたしましたが、若い世代で儀式行事を求めている割合が非常に高いのです。必要だといっている行事の高いものとしては、お七夜、初宮から10ほど挙げる中、成人式が若い方々で圧倒的です。
意外かもしれませんがこのように、私たちは戦後新しい儀礼をつくってきており、また現在も儀礼のニーズは高いのだという事実があります。

波平: これまでの人生儀礼をそのまま踏襲して、そしてそれを活性化したり、復興したりするということがなかなか難しいのは、伝統的な人生儀礼というのは、人生50年の設計で行われていたからです。ところが、人生が男性80年に近く、女性は87年に近くというふうに、人生がずっと延長されました。女性の視点で見ますと、少子化ということもありますが、高齢出産にならざるを得ない人たちが、危険をおかしながらも、子どもを妊娠し、産んで、育てようとしています。つまり、人生儀礼といいますけれども、人生の構造そのものが、大変変わってきているわけですから、人生儀礼を伝統的な復興というよりは、むしろ新しいものにつくり替えていく必要があるということです。
成人式というのも、10歳は昔のような子供ではなくて、インターネットを使いこなすなど、半分大人のような子供たちが増えていまして、「2分の1成人式」は子供たちにとって非常にニーズがあるだろうし、親にとっても祖父母にとっても、非常に関心のあるものでしょう。つまり、常に新しく見直してはじめて、儀礼文化というものは活性化するだろうと思います。
また、社会構造が変化し社会関係が変わっていくから、儀礼というものもどうしても衰退せざるを得ないのだという諦観といいますか、諦めといいますか、そうした目で見るのは、決して正しくないと考えております。といいますのは、現在、各地の農村などで行われている大変立派な無形民俗文化財の伝統行事は、いまのようなかたちになったのは、実は1970年代頃から文化庁が保存に動いた成果でして、比較的新しいのです。儀礼といってしまうと、なにか古いものがずっと連綿と続いているように見えますけれども、現実は全然そうではありません。
人生儀礼も、かたちとしては、いまの時点で見ますと、なにか非常に衰退していくように見えるかもわかりませんが、たとえば50年、70年、80年というふうに過去を振り返ってみるときに、いかに人々が絶えずリセットをしたりリフレッシュした、その努力があってこその、今日だと思いますので、どうぞ皆様方の経験と知恵と熱意でもって新たな儀礼文化を日本に起こしていただきたいと切に願います。

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藤島: 互助会は結婚式場も葬祭会館もどんどんつくってきました。これからは建物だけではなく新しい文化に根差したものをお考えいただきたい。古希や喜寿など、日本古来のものですけれど、そこに存在するのは夫婦愛なり家族愛というものだと思います。そういうものを、もっといいかたちでやれないかと思ったりします。
ひとつご紹介したいのですが、私どもの会社の案内の中で、6ページほど、日本の冠婚葬祭の歴史を写真入りでご紹介しております。ご覧になってない方がおられれば、ぜひ見ていただきたいと思います。簡潔に大きな流れがわかるようになっています。そのなかで、互助会の役割がいろいろなところで触れられているのですが、簡単にいうと、互助会は結婚式場をどんどんつくってきた。これは、結婚式と披露宴を結び付けて、合理的な、非常に華やかなかたちでやれるような形式を提案した。その結果として、花嫁行列はなくなりました。世の中の流れであればそういうことにもなっています。そのあと、90年代で葬祭会館をどんどんつくってきた。これも自宅葬よりもはるかに便利なかたちでやってきています。その結果としては、地域の団結がなくなっていきました。新しい儀式をこういう2つの会館で創造して生活も便利になるなど、貢献してきた事実はありますが、また別の意味での影響もあったということかとも思います。そういう中で、建物だけではなく新しい文化に根差したものをお考えいただきたいと思います。
桂由美さんに「ふるさとウエディング」というものをご紹介いただきましたが、花嫁は自宅で着物を着て出るのだ。そういうものを子どもに見せたいということ、あるいは船や人力車といったもので結婚式をやれないかと努力をされております。桂由美さんがもう一つ推薦していたのは、シビル・ウエディング(市民結婚式)を互助会でやってくれませんかということでした。ヨーロッパなどではよく行われているので、こういったことをぜひ日本で普及してくれないかといわれておりました。 もう1つ、雅叙園の梶社長(梶明彦氏。元JALパック社長)は、バウ・リニューアル(誓いの更新)ということをいわれています。ヨーロッパで流行っているもので、夫婦が人生の節目で絆を確かめ合い、愛を語り合うにも色々なかたちがあるわけです。それが日本では、金婚式、銀婚式といったことになってきますし、古希や喜寿など、日本古来のものですけれど、そこにあるのは夫婦愛なり家族愛というものだと思います。いま申し上げたようなことを、もっといいかたちでやれないかと思ったりもします。

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一条: 新しい儀式をつくっていくということで、私は3つほど大事なポイントがあると思います。1つ目は、皆が知っている儀式を新しくイノベーションしていくこと。よく知っている儀式といえば、成人式や七五三、長寿祝だと思います。2つ目は、あまり知られていない儀式を紹介すること。長寿祝や生年祝など、色々な儀式が日本中にあるのですが、こういったものを新しく紹介していくという方法。そして3つ目が、全く新しい儀式をつくっていくこと。全互協内でも検討されている、人生1万日や3万日の祝いなどが相当するのではと思います。
しかし、私が一番興味のある、可能性のあるものは、一番のよく知っている儀式のイノベーションだと思うのです。いま波平先生がおっしゃった、いろいろな人生儀礼というものは人生50年を基本としている。これは大きなことだと思います。50年以上の人生は、おまけみたいな奇跡みたいなものですので、やはりそこには感謝という思いが強くあったと思うのです。神社の神殿に向かって、「ここまで生かさせていただいてありがとうございます」と神に感謝した。初宮やお宮参りなどは、「命を与えていただいてありがとうございます」と。そして七五三について、七歳や三歳、五歳は一番死亡率が高い時期なのです。そのときに「生かさせていただいて、ありがとう」と。いまの人生儀礼は「お願いします」などの欲望ばかり前面に出てきて、感謝するという思いが薄れてきていると思うのです。子どもの衣装と写真を写して、食事をするだけのサービスを七五三パックといっているところがあるそうです。あるいは、同窓会のように皆で集まって楽しく写真を撮って、食事に行ってお酒を飲んで終わりというような成人式もあります。これはどうも本来の七五三や成人式といえるのでしょうか。「おめでとう」と皆がいい合うだけで、「ありがとう」という相手がおりません。「ありがとう」をいわないと儀式ではないのでは、と私は思うのです。それをいう相手は神様であり親ではないかと思います。「お父さん、お母さん。今まで育てていただいてありがとうございます」と。そういう舞台を設定していくことが大事ではないかと思います。
私どもはあちらこちらで事業をやっているのですが、沖縄は非常に儀式を重んじるところです。とくにトゥシビーといってお年寄りの長生きを祝う、長寿祝いが非常に発達しているのです。百数十人のお客さんが集まって、結婚披露宴と同じような飲食をしての式典もあるのです。当社の結婚披露宴に続く収益の柱で非常にありがたいことですが、そうした例がほかにもあるのではないでしょうか。長生きを祝う社会、皆でお年寄りの長生きを祝う社会をつくっていく。これが私どもの使命の1つではないかと思うのですが、そういう意味で沖縄の生年祝は非常にヒントが大きいと思いますし、これが全国に普及していければいいなと思っております。

藤島: 雑誌「ゼクシィ」の披露宴を挙げた理由の調査があるということで、ご紹介していきますと、「感謝」という言葉がキーワードとして浮かび上がってくるのだそうです。第1位が「親、親族に感謝の気持ちを伝えるために結婚式をやる」。第2位が「親、親族に喜んでもらうために」、第3位が「友人などに感謝の気持ちを伝えるために」という結果であります。最近の演出の例として、親に、自分が生まれたときと同じ重量の米やぬいぐるみをプレゼントして感謝をするとか、新郎から母への手紙を読んだりする、挨拶回りをするときに地元のお酒を注いで回って、家族の温かみをいろいろな方々に感謝の気持ちで表す、そういう傾向が出ているということであります。いろいろなことがいわれますけれど、若者の世界でもそういうような気持ちが高まってきている。これも大きな流れだと思います。それから、年間70万人が結婚しますけれども、40万の方しかこういう披露宴をしない。先ほどバウ・リニューアルについて申し上げましたが、それも1つのヒントではと思います。そういったことを思いながら、ぜひ互助会で良い儀式をつくりだして広めていただきたいと思います。
最近の調査では「感謝」という言葉がキーワードとして浮かび上がってくるのだそうです。家族の温かみをいろいろな方々に感謝の気持ちで表す、そういう傾向が出ているということです。若者の世界でもそういう気持ちが高まってきている。これも大きな流れだと思います。そういったことを考えながら、ぜひ互助会で良い儀式をつくりだして広めていただきたい。

一条: 40周年を迎えた全互協は、使命としまして日本の儀式を保存、継承していくことがあると思うのですが、私は日本人の心を継承していくことだと思うのです。日本にはいろいろな文化があります。お茶やお花、歌舞伎や相撲など、そしてそれらを保存、継承している諸団体があるわけです。私たちの全互協は実は、結婚式や葬儀や人生儀礼というものを継承していく団体であると思うので、全互協が先頭を切って儀礼の継承と創造を、当事者として自認して取り組まなければならないな、と思った次第です。茶道にしても華道にしても、歌舞伎でも相撲でも、その根底には儀式がありますので、儀式を司るということは、すべての文化の一番根っこにあると思うのです。日本人の精神生活、心、幸福ということにおいて、儀式を保存、継承していくことほど重要なものはないと思います。40周年を迎えた全互協が使命に向かって進んでいくことを祈っております。以上でございます。

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波平: 儀礼とは関係ないことですが、私の住んでいるところは年配者がたくさんいる住宅街なのですが、互助会の宣伝に来られるときにひと工夫をしていただけないでしょうか。ご葬儀のときにお困りになるのではありませんかといってパンフレットをパッと見せるのでなくて、もっと多様な儀礼ができますとか、88歳まで生きたらお祝いをするときのお金がいるのではないかなど、もう少し楽しいセールスをしてくれないものかと思います。

石井: 2点だけ申し上げておしまいにさせていただきます。1点は、誰かが儀礼文化を提案する必要があるだろうと。それは強く感じているものがそうすべきであって、おそらく皆様方はそういう方々だと思います。私も勝手に本を書いて喧伝したいと思います。そういう点で情報誌とか、ホームページが必要ということが大変緊急な事例としてあるのではないか。情報は決して馬鹿にできないもので、佐野厄除け大師が厄除けの宣伝をラジオやテレビで始めてから急激に増加したなど、神社では東京都神社庁がお宮の社頭に何年生まれの人は何歳のときに大厄であるなどを知らせる立て看板をつけてから、急速に増えたことがわかっております。それは、ただ情報を流したから増えたわけではなくて、たまたまやりたいと思っていたけれども、どうしたらいいかわからない方々にきちんとした情報を与えたのでニーズがあったということです。ですから誰かが提案する必要があるだろうということが1つです。 もう1つは、これまでの儀礼文化の研究は、どちらかというと死に関する研究に集約されてきたのです。もしくは生まれた直後の儀礼がたくさんあって、それが重要となるからです。しかし、おそらく現在は長い人生の中で人生を祝う儀礼文化全体で、我々の生の総体といいますか、それをなんとか区切り目をつけながら、自分の人生をきちんと過ごしていくための提案が大切なのではないか。それには「祝う」という言葉が一番良いのではないかと思っております。

司会: 私たちも40周年を迎えまして、本日いただきましたご意見を参考にさせていただき、どのように活かしてゆくか、あらためて活発な議論をいたしまして実践に臨みたいと思います。たいへんありがとうございました。

出席者(順不同)
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石井研士 氏

國學院大學神道文化学部長、教授 宗教学博士

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波平恵美子 氏

文化人類学者 テキサス大学Ph.D. お茶の水女子大学名誉教授

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藤島安之 氏

互助会保証株式会社代表取締役社長

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一条真也 氏

作家、㈱サンレー代表取締役社長 北陸大学未来創造学部客員教授

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司会 大西孝英 氏

(株)サニーライフ代表取締役 全互協広報・渉外委員会委員長

(本シンポジウムは一般社団法人としての第1回定次総会ならびに全互協40周年記念事業を推進するにあたり、その一環として、8月8日、ホテルベルクラシック東京[東京都豊島区]にて開催したものです)

座談会 無縁社会を乗り越えて 〜人と人の絆を再構築するために〜

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実施日:平成24年1月18日
場所:メモワールプラザソシア21(横浜市)

動画を見る
時間:16m37s
形式:WMV

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佐々木かをり 氏(進行役)

(株)イー・ウーマン代表取締役

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奥田知志 氏

北九州ホームレス支援機構理事長
日本ホームレス支援機構連合会会長

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鎌田東二 氏

京都大学こころの未来研究センター教授

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島薗 進 氏

東京大学大学院教授

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山田昌弘 氏

中央大学文学部教授
内閣府男女共同参画会議民間議員

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一条真也 氏

作家
北陸大学未来創造学部客員教授
冠婚葬祭互助会経営者、
全互協理事(広報・渉外委員長)

対談:孤独死に学ぶ互助会の使命とは

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実施日:2010年7月27日
場所:ホテルベルクラシック東京

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中沢卓実 氏

松戸市常盤平団地自治会長

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一条真也 氏

作家
北陸大学未来創造学部客員教授
冠婚葬祭互助会経営者、
全互協理事(広報・渉外委員長)

書籍

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無縁社会から有縁社会へ [単行本]
"無縁社会"の中で毎年3万2千人が孤独死しています。
少子化、非婚、独居……。血縁や地縁が崩壊しつつある現在、孤独死は高齢者だけの問題ではなく、あなたの身近に起こりうる緊急の社会問題となっています。
座談会では、薄れる家族関係、ワーキングプア、生活保護など現代日本の問題点に警鐘を鳴らし、人と社会との絆を取り戻すために何が必要かを話し合いました。この本は、6人の論客が提言を交わした2012年新春座談会の完全記録に、各著者が語り尽くせなかった内容、伝えたい事実の補足など、全員から補筆していただき、再編集したものです。

News

座談会に関する記事が週刊ポスト3/12発行号に掲載されました。